知的障がいとは

知的障がい とは

“知的能力と社会生活への適応能力が低いことで、日常生活における困難が発達期(18歳以下)に生じている状態”のことを指します。

ただし、知的障害者福祉法という法律こそあるものの、複数あるいくつかの法律では何を以って知的障がいとするのかの法的規定は明確に定まっていません。法的な定義がないため医学的定義を用いることが多いですが、教育の現場では「知的障がいとは、記憶・推理・判断などの知的機能の発達に明らかな遅れが見られ、社会生活への適応が難しい状態」といった定義が用いられています(文部科学省)

また、軽度の知的障がいの場合、適応能力の面においては特に発達の遅れが目立たないため、周囲や本人が障がいに気づくことがないか、非常に遅れてしまいます。大人になってから仕事の面で困難さを感じ、診断を受けてから初めて軽度の知的障がいだと気づく場合もあるのです。

知的障がいの判断基準

知的障がいは、どういった能力に遅れがあるのか、どういったものなのかという判断が難しいです。そのため、一般的に知的障がいの判断には「医学的な診断としての知的障がい」「福祉的な支援の対象としての知的障がい」の二つの診断を用いることがあります。ここで、この二つの診断についての説明を致します。

医学的基準の知的障がい

医学的な知的障害の判断を行う場合には、全般的知能の障がいと日常の適応機能の障がいによって特徴づけられます。

■知的機能:一般的に知能検査により評価され、平均より2標準偏差より低い(IQ得点では65-75)ことが目安となります。尚、従来はIQの基準が重視されていましたが、現在では実際の社会生活においてIQと社会生活における困難が関連していない場合もあるため、先にもいくつかご紹介していますが現在の診断基準(DSM-5)においては、

概念的領域(記憶・言語・読字書字・数学的思考・問題解決など)
社会的領域“(対人的コミュニケーション・社会的判断など)
実用的領域“(セルフケア・金銭管理・行動管理など)

大きく分けて三つの領域における適応機能が重視されるようになりました。

■適応機能:少なくとも1つの領域での領域での障がいの程度が著しく、安定して最適・適切な行動を障がい者本人がとるためには継続的な支援が必要な場合に診断の基準を満たすとされています。

また、知的障がいの重症度についても上記の3つの領域の状態によって、軽度・中度・重度・最重度の4段階で特定されます。また、小児期早期でこれらの判断が困難な場合に、全般性発達障がいとして診断されます。

福祉的基準の知的障がい

福祉的な知的障がいの判断については、「療育手帳制度について(昭和48年9月27日厚生省発児台156号構成事務次官通知)」に基づきます。

児童相談所もしくは知的障がい者構成施設などの施設において判定がなされます。判定をされたものについては療育手帳が交付され、これで初めて障がい福祉のサービスを受けることが可能になるのです。

尚、この交付手帳の名称や、交付における判断基準などは交付を行う自治体によってそれぞれ異なり、定期的には判定を再度行います。

知的障がいの程度に対する診断基準

先にお伝えしている通り、一般的に知的障がいは軽度・中程度・重度・最重度の4つの程度で重症度が分類されています。

重症度別の特徴

軽度 :支援があれば、書字読字・金銭の計算などの概念を理解し、買い物や家事を一人でもできるようになる / コミュニケーションはパターン化されているものが多いので、周囲の方とくらべると未熟である場合が多い。/ 記憶・感情・計画のコントロ―ルを苦手とする場合が多いです。

中程度:書字読字・金銭計算などは小学生ほどの水準にとどまっている場合が多く、基本的に周囲の支援が常に必要です。買い物・家事等が一人でできるようになるまでは長い時間をかけて支援が必要です/ 単純なものであればコミュニケーションが可能。/ 判断・意思決定が難しく、支援が必要です。

重度 :書字読字など、一般的に行う概念についての理解が殆どできません。常に支援が必要で、食事など日常生活における行動についての継続的な支援が欠かせない状態です。 / 身振り手振りでのコミュニケーションであれば可能。会話でのコミュニケーション等は難しいです。

最重度:認識したものに対する理解力が非常に低く、物理的なものに対する支援を継続的に行う必要があります。また、食事を始め入浴などの殆どすべての日常生活上の行動については常に他社の支援を必要とします。/ 身振り手振り・単語・句を区切ったコミュニケーションでも理解が難しいことが多いです。

基本的にIQ(知能指数)重症度を大まかに分類することができます。しかし先にもお伝えしている通り、IQに問題があったとしても適応能力が高い場合は知的障がいだと判断されない場合もあります

適応能力の判断

知的障がいを判断する上で、障がいの判断基準に考えられる適応能力についての判断があります。この適応能力とは一般的に「数量・時間計算の概念理解能力」「対人関係におけるコミュニケーション能力」「金銭管理・食事準備等の生活を送る上で必要となる能力」などを指します。

この適応能力の水準の判断を行うためには【ヴァインランドⅡ】などの検査を用いて、相談機関や医療機関などで評価される場合があります。

■ヴァインランドⅡ…適応行動の発達水準を幅ひろくとらえることで、支援計画の作成に役立つ検査。「強み(S)」「弱み(W)」「対比較」などで個人内差を把握します。

コミュニケーション・日常生活・社会性・運動・不適応行動、以上の各項目についての判断を行うことで対象者の適応行動の全体的発達水準を計算し、領域内における発達度合いの差を調べます。それによって対象者の相当年齢を求めることができ、また対象者の得点がどの年齢集団の平均的な水準と一致すのかを調べることが可能。また、対象者の不適応行動の特徴を捉えることも可能です。

知的障がいの原因・遺伝性

知的障がいの原因については不明なものも含めて様々なものがあります。

時期別の原因として考えられるもの

〇出生前の原因:内的原因(遺伝子/染色体などの異常)、母体の感染症た薬物の影響・外傷などによって起きる外的原因によるものがあります。

〇周産期(妊娠後期(満28週)~新生児早期(生後1週間以内)を指す):出産のトラブルによって低酸素・循環障害などが発生することによって起きることがあります。現在では医療進歩と共に出産時トラブルが原因による事例は少なくなっているとのことです。

〇出生後:交通事故などによる頭部外傷や、感染症・不適切な養育環境・虐待などが原因になる場合があります。

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